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東穀取解散報道で揺らぐ農産物先物の未来(下)

経営危機の東穀取に解散願う業者の声

(前回の続き)
経営破綻が目前に迫った東穀取だが、業界内では意外にも冷めた見方が多い。「意外にも」という表現は、東穀取のこれまでの立ち位置が常に業界の中心にあったことが前提にある。もっとも市場のボリューム自体はすでに長らく工業品がメインとなっており、業界への影響力も東穀取を管轄する農水省より東工取を管轄する経産省の方がずっと大きくなっている。

それでも業界に携わる人間が東穀取に愛着をもつ理由は、東穀取の歩みが即日本における商品先物市場の歴史と重なるからである。かつての事務所があった場所(日本橋蛎殻町1丁目)は明治6年まで西郷隆盛の屋敷があり、同7年に中外商行会社が買取り社屋を建てた場所であった。この中外商行会社が後の東穀取である。

中外商行会社はその後同26年に制定された取引所法により「東京米穀取引所」となり、昭和14年に戦時統制経済に移行するにあたり閉鎖となったが、それまでの数十年間は中核の取引所として大きな役割を果たした。
その後同25年に新しい商品取引所法の制定で同27年に今日の東京穀物商品取引所へと変わっていった。

昨年まで事務所として使われていた建物は、昭和の末期に建てられたものだが、それ以前の建物は昭和4年に完成したもので、古典的な建物としての品位を保った堅牢な造りであったと言われる。この建物は第二次世界大戦の空襲にも耐え抜き、同61年まで使用された。

こうした経緯もあり、建物が変わっても東穀取は業界人にとってシンボル的な存在だったのである。特に現役の会長、社長世代にとっては、旧い建物も記憶に刻まれており尚更こうした気持ちは強いだろう。

ここで話を戻すと、ここまで国内の商品先物取引にとって大きな存在だった東穀取も、もはや業界人にとっては金食い虫のような厄介者に成り下がってしまったのである。
この最大の理由は、昨年事務所を売り払って東工取裏の一角にある商業ビルに移転したことだった。業界人は東穀取という看板ではなく、業界のシンボライズとも言うべき旧来の建物やその一体に漂う歴史ある空間に愛着を持っていたわけで、決して東穀取経営陣と心が通っていたからではなかった。

そこを現経営陣の社長と専務(どちらも農水省の天下り)が勘違いし、取締役会も通さずに勝手に事務所を三菱地所に売却してしまった。今この跡地にはマンション建設が進んでいるが、重機の音が周囲に虚しく響いている。

それはともかく、昨年来東穀取は業界団体から解散要求を突きつけられたり、東工取に市場移管を要請したかと思えばコメ上場認可を受け急に撤回したり、解散話が出たり、完全に負のスパイラルにはまっている。
取締役会の日程上、東工取の記者発表後すぐに東穀取の記者発表が続くが、近所だというのに東穀取になると記者の数がグッと減る。その上東穀取側も記者の方もどこか白けた雰囲気が漂い、質問もほとんどなくすぐに終わりとなる。

一般紙に東穀取のニュースが出るのは、近年ではコメ先物認可を除けば上記のようなマイナスニュースばかりである。

こんな状況で、市場の流動性を回復させようといったところで、どう考えても不可能だろう。
まず外務員が農産物商品を勧められない。「つぶれそうな取引所で注文を出して大丈夫なのか?」と聞かれても、外務員は何とも言えないだろうし、問い合わせが来たところで業者も回答できないはずだ。

本来こうした解散にまつわる話は、最後まで伏せておくのが通例である。それが一般紙に出るのは、業界の誰かがリークしているからである。
具体的に言えば東穀取の株主である一部の商先業者であり、目的は少しでも東穀取に財産が残っているうちに解散してもらい、株主に分配してもらうことだ。

取引所が経営悪化に陥った要因は、出来高1枚あたりで業者が取引所に払う定率参加料の収入減だが、当然業者側も経営状態が悪化している。このため、背に腹は変えられないとの思いから東穀取解散を既成事実化しようとしている動きも見える。

確かに東穀取の出来高状況を考えると、日を追って財産を食いつぶしている状態で、このままでは前の事務所を売った33億円がなくなるのも時間の問題となっている。完全に破産する前に早く解散してほしいと願う気持ちももっともだろう。

ただ、業界のシンボルとして誰もが見上げ愛着を抱いた東穀取が臨終間際にあり、遺産分配を期待し1日も早い死を望まれている事実に、業界に関わる人間として一抹の寂しさを覚える次第である。

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