過去と現状の問題点先 物 新 報

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商品先物業界の専門紙記者が、業界ニュースを中心に関連情報をお届けします。
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商品先物取引の過去と現状の問題点(4)

商品先物取引は農林水産省と経済産業省の両省で管轄している。

東京穀物商品取引所を中心に上場されている、コーンや大豆など農産品は農林水産省、一方東京工業品取引所を中心とした金や原油などの工業品については、経済産業省の管轄となっている。

その経済産業省が今年2月に、「2010年にグローバルな工業品先物市場を実現する10のアクション」というレポートを公表した。それによると中長期的に「アジア経済の成長を支えるプラットフォーム」とする市場を目指すとして、そのための活性化策を列挙したものである。だがこれを読んだ業界人は、誰一人として実現を信じてはいないだろう。はっきり言って「おとぎ話」に近い。

前回紹介した平成17年の施策により、それ以降の直近5年間で、商品先物市場の取引量は約3分の1に落ち込み、業者も手数料収入などの売り上げが減ってしまい、この1~2年でバタバタと廃業している。今残っている商品先物取引業者は、40社に満たない。ほんの5~6年前には100社を超えていたことを考えると、相当な速さで業界が縮小している。

もっとも廃業した会社には、営業姿勢のかなり悪かったところも多々あったので、ある意味では行政の対応は成功したともいえるが、とにかくあまりに引き締めが急激過ぎた。

話を戻すと、10のアクションでは今後取り組むべき課題として
(1)証券市場などと商品市場の連携強化
(2)参加者の拡大
(3)アクセス(=取引所の取引システム)の改善による参入促進
(4)投資家のリスク管理に応える行政と商品取引員ビジネス
(5)商品取引の清算機関の機能強化
を柱とし、この下に具体的な項目が並んでいる。

いずれも使い古された言葉を集めたもので、目新しいものは何もない。
要するに、取引所のルールやシステムを海外のファンドなど大手投機家がやりやすいように変えていけば、どんどん市場参加者が増えて、市場が賑わいを取り戻すという行政側の考えを改めて示したものに過ぎない。

しかし残念ながらこの図式は成り立たない。
海外から大量の注文が入れば確かに市場は賑わうだろうが、そもそもモノの値段は一部の人間が決めるものではなく、大勢の人間による見方が反映されていなければ、とても公正な値段とはいえない。
それに、海外のファンドは勝てない勝負は絶対にしない。言い換えれば、プロ同士の喧嘩はしないのである。

では勝てる勝負とは何か?
結論を言えば、素人である一般個人の注文である。日本の商品先物市場は業者に対する厳しい勧誘規制が影響し、どんどん一般個人の参加者数が減少している。一部どんなに制度が変わっても注文を出し続ける個人の相場好きがいるにはいるが、全体の割合を考えれば微々たるものである。

海外のファンドにとって、一般個人の注文が減るということは自分達の利益が減ることと同義なわけで、その分魅力も欠けてくる。それに海外ルールにすべて合わせてしまうことは、日本市場の存在感を打ち消す行為でもある。同じルールなら、取引所は1つあれば事足りるからだ。

とにかく今は、一般個人の参加者を増やさなければならない。個人の注文といっても、すべてがハゲタカに食われるわけではない。立派に収益をあげている参加者もたくさんいる。
まずは商品先物取引の面白さを広く伝え、1人でも多くの参加者を集めることに注力すべきである。

だが、役所は業者の勧誘規制を緩めると、またトラブルが多発した時代に逆戻りするのではないかと懸念している。
このためさらに規制を強化しようという流れが出来上がっており、商品先物市場の縮小は進む一方なのである。

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商品先物取引の過去と現状の問題点(3)

前回2回に続き、再び平成17年を起点に話を進めよう。

この年は委託手数料の自由化が導入され、各社の引下げ競争が始まった。これにより主要な収益源を抑えられ、さらに4月には個人情報保護法が施行されたことで、各商品先物会社は社内体制の整備に追われた。翌5月には間髪入れずに改正商品取引所法が施行され、厳しい営業行為規制が敷かれたことで、どの商品先物会社も社内内部の管理部隊、外部の営業部隊ともにてんてこまいの大混乱に陥ったのである。

だが現在の出来高減少に最も大きな影響を及ぼしているのが、主務省である農林水産省と経済産業省が先に述べた5月施行の改正法に準拠する形で策定した「委託者の保護に関するガイドライン(以下ガイドライン)」である。
これは
(1)適合性の原則
(2)不当勧誘規則
(3)説明義務
の3点に重点が置かれている。

ガイドラインでは勧誘行為について、「商品先物取引の委託契約締結、または契約締結後の個々の取引の委託の意思形成に影響を与える程度に商品先物取引を勧める行為」と定義している。例えば先物取引のメリットを強調するだけでも勧誘行為とみなされる。

詳細に見ると、(1)の適合性原則では勧誘相手の申告に基づいた職業、収入、投資可能資金額、取引経験の有無など細部に渡る情報収集が求められている。
その際、相手が年金及び退職金給与所得以外の所得で生計を立てている場合、また年収が500万円未満の場合、75歳以上を目安とする高齢者に対する勧誘については“商品先物取引の参加者として不適当”と位置付けている。
もし条件から外れる相手と取引契約を結ぶ場合は、商品先物会社は見込客に対して資産の裏付けを取らなければならない。その上客側から「自分は適合性原則を満たさない立場であるが、自己責任の下で商品先物取引をやりたい」という意味合いの書面を自筆でもらわなければならない。

これに(3)の説明義務が加わってくる。
具体的には商品先物取引がハイリスク・ハイリターンであることに始まり、証拠金の仕組みや手数料体系などすべてひっくるめて説明しなければいけない。しかもこれは客の習熟度によらず一律に義務として課せられる。

だが、この段階で見込客はかなりの割合で取引をすることなく退いて行ってしまう。
一体誰がこんな面倒くさいことをやってまで、商品先物取引をやりたいと思うだろうか。さらに「資産の裏付け」については商品先物会社がそれぞれ独自でルールを設定しているが、会社によっては預金通帳のコピーを提出しなければならないところもある。

これは特に慎重な会社の例だが、客の立場からしたら「何様のつもりだ」と言いたくもなるだろう。だが商品先物会社からすれば、後々役所に確認作業の不備を指摘されるのが怖いのである。

これに(2)の不当勧誘規制がとどめとなる。これは再勧誘禁止のことで、「勧誘に入る前に自らの会社名と勧誘目的を明記し、客側から少しでも否定的な意思を示されたら再勧誘を禁止する」というものである。

「商品先物取引の勧誘ですがよろしいですか?」と尋ねて、「必要ない」と一言返されたらもうそれっきり勧誘はできない。(2)についてはFX(外国為替証拠金取引)もほぼ同一の規制となっているが、FXにはこうしたガイドラインが存在しない。
だからFXは個人資産の有無や有職・無職を問わず家庭の主婦や学生も参加でき、活況を呈したのである。

もっともガイドラインによる問題だけなら、出来高減少を解決する方法はそれほど難しいものではない。
最大の問題は、行政や取引所が完全に市場活性化の真逆を向いているからである。(続く)

商品先物取引の過去と現状の問題点(2)

平成17年は商品先物業界にとって、一大変革期とも言える1年となった。

取引手数料の自由化に始まり、5月には改正商品取引所法の施行によって強力な営業規制が敷かれた。
結果的に今までのような強引な電話勧誘や訪問営業ができなくなり、従来の営業スタイルを改めなかった商品先物会社には主務省である農林水産省と経済産業省の厳しい検査が入り、違反が見つかれば数カ月に及ぶ長期の営業停止措置が科せられた。
商品先物会社は強気一辺倒の営業姿勢から一転し、役所の顔色をうかがいながら恐る恐る暖簾を掲げなければいけなくなったのである。

だがどんな分野であれ、急すぎる変革は必ずどこかに歪みを生じさせる。
まず、法改正後も悪質な営業行為を繰り返し廃業に追い込まれた商品先物会社の社員が、大量に法規制のなかった海外先物取引の業者に身を転じたことである。結果的に以後数年間は、国内の商品先物取引に変わって海外商品先物取引に関連したトラブルが激増し、役所も頭を抱える事態になるのである(なお海外先物取引については、2011年1月施行の商品先物取引法により許認可業となる)。

海外先物業者は、ニューヨークやロンドンなどの世界的な商品先物市場に注文を取次ぐという名目で一般顧客から投機資金を集めたが、ほとんどの海外先物業者が実際に取次ぐことなく顧客の資金を「丸飲み」していた。競馬でいう「ノミ屋」と一緒である。

集めた資金は自社で運用するなどしていたが、もともと顧客に返還する意思など初めからないため、夜逃げ同様に突然ドロンするケースもあったという。(続く)

商品先物取引の過去と現状の問題点(1)

相変わらず国内の商品先物取引の取引量が低迷している。

これはもとを正せば日本の商品先物取引会社の営業姿勢が悪すぎたことに起因している。
かつては新入社員など若手を中心としたしつこい電話攻勢から、アポイントが取れたら中堅社員による深夜にも及ぶ訪問営業、いったん契約を結んで入金させたら主任クラスにチェンジし、今度は脅しに等しい手数料稼ぎの売買回転から、挙句の果てには客の縦玉に向って反対売買を仕掛け、客が損するまで待って、それをそっくり自社の利益に転換させるという悪辣な手口を繰り返した。

こうした結果、国民からはそっぽを向かれ、行政の縛りはどんどんきつくなっていった。

ここまでは当然の帰結で、まさに因果応報といっていい。
特に平成17年5月の改正商品取引所法の施行により、トラブルの原因だった営業行為に大幅な規制が敷かれた。

だが、こうした規制が「業界一律に」課せられたため、まっとうに営業していた優良な商品先物取引会社までもが強烈な規制の網でがんじがらめにされてしまった。
ここで勘違いしないでいただきたいのは、商品先物取引の制度自体に罪はないということである。この制度を使って素人顧客をだましてきた悪質な業者に問題があったのである。先物取引の制度自体は、世界を見渡しても重要な産業基盤である。

改正法施行から5年近く経過し、現在の商品先物業界から悪質業者はほとんどすべて撤退した。問題企業には役所が厳しい検査を繰り返し、問題が見つかれば長期の営業停止ペナルティーを科して事実上廃業に追い込んだのである。

今国内の商品先物取引は、かつてのような強引な電話営業もなく、客の自由意志によって取引を行える公平な土台が出来上がったが、あまりにも急激な制度変革がそこかしこに歪みを生じさせてしまった。(続く)